黒柴彼氏と白猫彼女

方言丸出しカップルの日常

結婚挨拶で実親のヤバさに気付いた

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私と親は反りが合わない。

 

生まれてこの方、ずっとそう信じてきた。

 

子供と動物は殴ってしつけろ、な父。

結婚して夫と子供のために尽くすのが女の幸せ、な母。

 

こんな両親の間に産まれた娘が、動物のお医者さんになるためなら結婚できなくても構わない!と決意した人生を送っているのは、本当に奇跡というか、生まれてくる家を間違えたのではないだろうか。

 

それでも、そのときの時代背景とか育った環境にもよるし、なんだかんだで自分の選んだ人生を歩んでいるし、良い年こいて今さら親の育て方に文句つけても仕方ないと半ば諦め、成人してからは程よい距離感で接していると思っていた。

 

結婚挨拶の連絡をするまでは。

 

私はリアルではあまり自分のことを話すタイプではない。

親に対しては特にそう。

幼少期から「子供は黙ってろ」「口答えするな」と意見を封じ込められ、たまに何か聞かれたとしても、親が期待する言葉じゃなければ非難される。芸術鑑賞の感想も、友達と遊んだことも、その友達の人物像自体も。

 

そんなんだから、恋人はもちろんのこと、友人や趣味について聞かれても話すことはほとんどなかった。

 

「自分の大切な人とこんな両親を繋ぐくらいなら、結婚しない方がマシ」と、つい数年前までは本気で思っていたくらいである。

 

しかし、親は親。

体罰は受けたけど、虐待を受けた訳ではない。

親は親なりに愛情をかけて必死に子育てをした結果、たまたま私の人格とは合わなかっただけ。

それなりの義理は立ててもいいんじゃないだろうか。

 

そう考え、黒柴さんからプロポーズを受けた後、まずは我が家に挨拶へ行くことを提案した。

 

女性側の両親に挨拶→男性側の両親に挨拶→顔合わせ→引っ越し→入籍、の流れ。

 

婚約記念品の交換もするし、結婚指輪も揃えるし、結婚式も挙げる。

 

本心ではど田舎にある実家に行くのもめんどくさいし、指輪にも結婚式にも全く興味はないが、それを果たすのは最低限の義理だと思った。

 

特に結婚式は2人の問題だけではなく、色んな人の思惑が絡むから、ゆっくりと相談しながら話を進めていくつもりだった。

 

しかし、そのためには遠距離恋愛状態をどうにかする必要がある。

黒柴さんが長距離通勤してくれることでこの問題は解決したが、どうせなら住所変更と同時に氏名変更をしておきたい。

 

そもそも式よりも籍に重きを置いている私達は、記念日にどうしても婚姻届を提出したい。

 

そこまで2人で話し合い、おおよそのスケジューリングをした上で、実親に挨拶に行く連絡を入れた。

 

そして返ってきたのが「誰!?」という言葉。

 

おめでとうでも、良かったねでもない。

せめて「どんな人?」じゃないだろうか。

 

数週間前に早く結婚しろみたいなこと言ってたよね。もう若くないんだから、とも。

 

私はそのとき結婚を考えている相手はいる、と答えたよね。

なんなら去年の5月から兄弟には報告してたよ。

 

なんで今更そんな失礼な言い方するのか分からなかったけど、親も動揺しているんだろうなと思い、彼の経歴や人柄などを聞かれるまま伝え、電話を切った。

 

そして挨拶前夜。

突然電話してきて「これからどういうつもりでいるの?」と質問される。

 

30過ぎた娘が実家に男を連れて行く理由が他にあるのかと思いつつ、「いや結婚するつもりだけど。」と答える。

 

「いつ頃?式は?」と聞くので、考えていたことを正直に伝える。

 

それが逆鱗に触れてしまったらしい。

 

初対面で結婚の挨拶されるとかあり得ない、式よりも先に籍を入れるなんてあり得ない、そもそも嫁に行かせるつもりなんてなかったのに、と次々にまくし立てる。

 

娘を取られる親の気持ちも考えろ、と。

 

なるほど共感できなくはない。

だが納得して予定変更できるかというと、それは別。

 

交通機関がほとんどない遠方の田舎にあり、帰省する度に数万円かかる実家。

私も黒柴さんも仕事が忙しく、そんなに時間が取れない。

しかも年齢的に、もし親の希望通りに婚期を伸ばしていたら、高齢出産は免れない。

 

そこまでして貴方達の意見を尊重するメリットって何?

という言葉を飲み込んで、冷静に話をしようとするも、全く聞く耳を持たない。

 

お互いにあと10年若かったらともかく、今まで散々独身子無しであることをなじっておいて、いざとなると「嫁に取られて寂しい」とか「まだ心の準備が出来ていない」と言われても、いい加減子離れしてくださいとしか思えないのだが。

 

その後も黒柴さんの学歴や職歴にケチをつけたり、妊娠してたらまだ許せたのに、身内だけなら何とかなるからとりあえず式は先にやりなさいみたいなことをわめき散らし、ようやく解放された。

 

日頃はLINEの使い方が分からないとか言ってすぐ人を頼るくせに、黒柴さんの会社のネガコメをわざわざ探してくるくらいにはネット使えるんだね。

 

そりゃ元々家族だけで式するつもりだったけど、私達の会社や友達の都合や、呼びたい人ややりたいことについては全く思いを馳せないんだね。

 

この日に向けて髪を切ってスーツを整え靴を磨き、緊張した面持ちでいる黒柴さんに報告するのは気が引けたけど。

 

「親御さんがどう思ってようと、誠実に向き合い、自分の意思をきっちり伝えるだけ。何があっても俺はにゃんすの味方だから。」と完璧すぎる回答。

 

それでも不安なのか、マナーや当日の流れを何度も確認してた。

元冠婚葬祭業にお勤めの黒柴さんに対して、マナーや話し方にケチをつけられる人はそういないのに。

 

そして当日。

 

約束の時間ぴったりにチャイムを押す黒柴さん。

礼儀正しく挨拶する黒柴さん。

仏壇を見て一目で宗派を判断し、お線香を上げる黒柴さん。

どこからどう見ても非の打ち所がないというか、さすがの両親もびっくりするレベル。

 

それなのに、うちの親は。

 

黒柴さんや私達のことはほとんど聞かず、自分の話ばかり。

過去の自慢や、今の身体の不自由さアピールが1時間近く続く。

それでも黒柴さんは敬語でにこやかに相槌を打ち続けるから、「あれ、私いま訪問販売の同行に来たんだっけ?」と錯覚するほど。

 

もちろん「娘をよろしく。」なんていう言葉が出るはずもなく、それどころか私を酒呑みだのケチだの貶す始末。

 

黒柴さんはそんな私の気取らない所や堅実的な所が好きなんだよ!

 

そんな不毛なやり取りをしていてもラチが開かないので、黒柴さんがついに切り出した。

 

「これから2人で頑張って家庭を築いていきたいと思いますので、結婚のお許しをください。お願いします。」

 

それに対する両親の答え。

 

「まぁ慌てず、段階を踏んで良いお付き合いをしてください。」

 

???

 

お互いに30過ぎて1年近く結婚前提にした交際を続け、良い所も嫌な所も知った上でプロポーズを了承し、親へ報告した訳だが?

 

全く慌ててもいないし、段階は踏んでるし、さっき貴方達は相手と実際会ってみて安心したとまで言っていたが?

 

高校生カップルかなんかと勘違いしてない?

 

帰り道、黒柴さんがぼそっと「で、あれは賛成なの?反対なの?」というのが切ない。

 

「結婚を前提にした交際には賛成だけど、実際に結婚することには反対というか、渡したくないって駄々を捏ねてるんだと思う。」

「何それ。何ヶ月後の、何回目の訪問でそれは許されるの?」

 

黒柴さんにとっては、かなり不快な経験だったであろう。

 

裏で根掘り葉掘り聞かれる割りには、実際には自分の存在を蔑ろにされる。

 

聞かれたことには正直に応えようと、たとえ相手に良く思われてなくても誠実に向き合おうと覚悟して来たのに。

 

初対面の人にって言うけど、こっちだって初対面の人に「許してください、お願いします。」って頭下げてるんだよ?

 

貴方達は親だから子供には何を言ってもいい、人生をコントロールする権利があると思っているのかもしれないけど、実際は親の許可がなくても結婚できるし、今絶縁して困るのは、仕送りも介護の当てもなくなる親の方だからね。

 

こっちは帰省のストレスやボロ家の片付けや介護や負の遺産相続が断捨離できてハッピーなだけだから。

 

それでも親だから、これも一種の愛情表現だから、今だけ私や黒柴さんが我慢すれば良いだけだから、という感情が自分を責めてくる。

 

でも、私が本当に幸せになるのはどっちの方向?

 

結局、弱い私には親を捨てるほどの決心は出来ないかもしれない。

 

だけど、自分を大切に想ってくれる方、実際に行動で示してくれる方を大事にできるよう、行く先を間違えないようにしたい。