結婚挨拶で実親のヤバさに気付いた
私と親は反りが合わない。
生まれてこの方、ずっとそう信じてきた。
子供と動物は殴ってしつけろ、な父。
結婚して夫と子供のために尽くすのが女の幸せ、な母。
こんな両親の間に産まれた娘が、動物のお医者さんになるためなら結婚できなくても構わない!と決意した人生を送っているのは、本当に奇跡というか、生まれてくる家を間違えたのではないだろうか。
それでも、そのときの時代背景とか育った環境にもよるし、なんだかんだで自分の選んだ人生を歩んでいるし、良い年こいて今さら親の育て方に文句つけても仕方ないと半ば諦め、成人してからは程よい距離感で接していると思っていた。
結婚挨拶の連絡をするまでは。
私はリアルではあまり自分のことを話すタイプではない。
親に対しては特にそう。
幼少期から「子供は黙ってろ」「口答えするな」と意見を封じ込められ、たまに何か聞かれたとしても、親が期待する言葉じゃなければ非難される。芸術鑑賞の感想も、友達と遊んだことも、その友達の人物像自体も。
そんなんだから、恋人はもちろんのこと、友人や趣味について聞かれても話すことはほとんどなかった。
「自分の大切な人とこんな両親を繋ぐくらいなら、結婚しない方がマシ」と、つい数年前までは本気で思っていたくらいである。
しかし、親は親。
体罰は受けたけど、虐待を受けた訳ではない。
親は親なりに愛情をかけて必死に子育てをした結果、たまたま私の人格とは合わなかっただけ。
それなりの義理は立ててもいいんじゃないだろうか。
そう考え、黒柴さんからプロポーズを受けた後、まずは我が家に挨拶へ行くことを提案した。
女性側の両親に挨拶→男性側の両親に挨拶→顔合わせ→引っ越し→入籍、の流れ。
婚約記念品の交換もするし、結婚指輪も揃えるし、結婚式も挙げる。
本心ではど田舎にある実家に行くのもめんどくさいし、指輪にも結婚式にも全く興味はないが、それを果たすのは最低限の義理だと思った。
特に結婚式は2人の問題だけではなく、色んな人の思惑が絡むから、ゆっくりと相談しながら話を進めていくつもりだった。
しかし、そのためには遠距離恋愛状態をどうにかする必要がある。
黒柴さんが長距離通勤してくれることでこの問題は解決したが、どうせなら住所変更と同時に氏名変更をしておきたい。
そもそも式よりも籍に重きを置いている私達は、記念日にどうしても婚姻届を提出したい。
そこまで2人で話し合い、おおよそのスケジューリングをした上で、実親に挨拶に行く連絡を入れた。
そして返ってきたのが「誰!?」という言葉。
おめでとうでも、良かったねでもない。
せめて「どんな人?」じゃないだろうか。
数週間前に早く結婚しろみたいなこと言ってたよね。もう若くないんだから、とも。
私はそのとき結婚を考えている相手はいる、と答えたよね。
なんなら去年の5月から兄弟には報告してたよ。
なんで今更そんな失礼な言い方するのか分からなかったけど、親も動揺しているんだろうなと思い、彼の経歴や人柄などを聞かれるまま伝え、電話を切った。
そして挨拶前夜。
突然電話してきて「これからどういうつもりでいるの?」と質問される。
30過ぎた娘が実家に男を連れて行く理由が他にあるのかと思いつつ、「いや結婚するつもりだけど。」と答える。
「いつ頃?式は?」と聞くので、考えていたことを正直に伝える。
それが逆鱗に触れてしまったらしい。
初対面で結婚の挨拶されるとかあり得ない、式よりも先に籍を入れるなんてあり得ない、そもそも嫁に行かせるつもりなんてなかったのに、と次々にまくし立てる。
娘を取られる親の気持ちも考えろ、と。
なるほど共感できなくはない。
だが納得して予定変更できるかというと、それは別。
交通機関がほとんどない遠方の田舎にあり、帰省する度に数万円かかる実家。
私も黒柴さんも仕事が忙しく、そんなに時間が取れない。
しかも年齢的に、もし親の希望通りに婚期を伸ばしていたら、高齢出産は免れない。
そこまでして貴方達の意見を尊重するメリットって何?
という言葉を飲み込んで、冷静に話をしようとするも、全く聞く耳を持たない。
お互いにあと10年若かったらともかく、今まで散々独身子無しであることをなじっておいて、いざとなると「嫁に取られて寂しい」とか「まだ心の準備が出来ていない」と言われても、いい加減子離れしてくださいとしか思えないのだが。
その後も黒柴さんの学歴や職歴にケチをつけたり、妊娠してたらまだ許せたのに、身内だけなら何とかなるからとりあえず式は先にやりなさいみたいなことをわめき散らし、ようやく解放された。
日頃はLINEの使い方が分からないとか言ってすぐ人を頼るくせに、黒柴さんの会社のネガコメをわざわざ探してくるくらいにはネット使えるんだね。
そりゃ元々家族だけで式するつもりだったけど、私達の会社や友達の都合や、呼びたい人ややりたいことについては全く思いを馳せないんだね。
この日に向けて髪を切ってスーツを整え靴を磨き、緊張した面持ちでいる黒柴さんに報告するのは気が引けたけど。
「親御さんがどう思ってようと、誠実に向き合い、自分の意思をきっちり伝えるだけ。何があっても俺はにゃんすの味方だから。」と完璧すぎる回答。
それでも不安なのか、マナーや当日の流れを何度も確認してた。
元冠婚葬祭業にお勤めの黒柴さんに対して、マナーや話し方にケチをつけられる人はそういないのに。
そして当日。
約束の時間ぴったりにチャイムを押す黒柴さん。
礼儀正しく挨拶する黒柴さん。
仏壇を見て一目で宗派を判断し、お線香を上げる黒柴さん。
どこからどう見ても非の打ち所がないというか、さすがの両親もびっくりするレベル。
それなのに、うちの親は。
黒柴さんや私達のことはほとんど聞かず、自分の話ばかり。
過去の自慢や、今の身体の不自由さアピールが1時間近く続く。
それでも黒柴さんは敬語でにこやかに相槌を打ち続けるから、「あれ、私いま訪問販売の同行に来たんだっけ?」と錯覚するほど。
もちろん「娘をよろしく。」なんていう言葉が出るはずもなく、それどころか私を酒呑みだのケチだの貶す始末。
黒柴さんはそんな私の気取らない所や堅実的な所が好きなんだよ!
そんな不毛なやり取りをしていてもラチが開かないので、黒柴さんがついに切り出した。
「これから2人で頑張って家庭を築いていきたいと思いますので、結婚のお許しをください。お願いします。」
それに対する両親の答え。
「まぁ慌てず、段階を踏んで良いお付き合いをしてください。」
???
お互いに30過ぎて1年近く結婚前提にした交際を続け、良い所も嫌な所も知った上でプロポーズを了承し、親へ報告した訳だが?
全く慌ててもいないし、段階は踏んでるし、さっき貴方達は相手と実際会ってみて安心したとまで言っていたが?
高校生カップルかなんかと勘違いしてない?
帰り道、黒柴さんがぼそっと「で、あれは賛成なの?反対なの?」というのが切ない。
「結婚を前提にした交際には賛成だけど、実際に結婚することには反対というか、渡したくないって駄々を捏ねてるんだと思う。」
「何それ。何ヶ月後の、何回目の訪問でそれは許されるの?」
黒柴さんにとっては、かなり不快な経験だったであろう。
裏で根掘り葉掘り聞かれる割りには、実際には自分の存在を蔑ろにされる。
聞かれたことには正直に応えようと、たとえ相手に良く思われてなくても誠実に向き合おうと覚悟して来たのに。
初対面の人にって言うけど、こっちだって初対面の人に「許してください、お願いします。」って頭下げてるんだよ?
貴方達は親だから子供には何を言ってもいい、人生をコントロールする権利があると思っているのかもしれないけど、実際は親の許可がなくても結婚できるし、今絶縁して困るのは、仕送りも介護の当てもなくなる親の方だからね。
こっちは帰省のストレスやボロ家の片付けや介護や負の遺産相続が断捨離できてハッピーなだけだから。
それでも親だから、これも一種の愛情表現だから、今だけ私や黒柴さんが我慢すれば良いだけだから、という感情が自分を責めてくる。
でも、私が本当に幸せになるのはどっちの方向?
結局、弱い私には親を捨てるほどの決心は出来ないかもしれない。
だけど、自分を大切に想ってくれる方、実際に行動で示してくれる方を大事にできるよう、行く先を間違えないようにしたい。
形見の指輪を鑑定に出した
婚約指輪はいらない。
かなり前からそう思っていた。
仕事場では指輪はつけられない。
オフの日でも特につけたいとは思わない。
他人が付けているのを見て「綺麗だな」とは思うけど、自分が欲しいとはならなかった。
猫に小判、にゃんすに婚約指輪。
しかし、何もないのもどうなんだろう?
結婚式よりも先に、同居と婚姻届の提出を選んだ私たち。
結婚指輪も間に合うか分からない。
単に式にも指輪にもあんまり興味がないだけなんだけど。
昔気質の親からは「にゃんすは指輪も式も出せないような甲斐性無しを選んだのか…」と思われかねない。
非常にめんどくさいが、ないならないで親を納得させる理由を用意する必要がある。
でも要らんもんは要らん。
そこで、数年前の祖母の遺品整理の際に、立て爪の指輪を形見分けしてもらっていたことを思い出した。
デザインも古いし、宝石部分も曇っていて、価値があるのか分からない。
突然の逝去にも関わらず、生前整理や終活をしっかりしていた祖母が何も言ってなかったのを考えると、そこまで思い入れはないのだろう。
その場にいた母や叔母がすんなり私にくれたのは、そんな思惑があったからかもしれない。
でも、祖母の形見の指輪であることには違いない。
これをリフォームしてネックレスにでもすれば、「婚約指輪の代わりに、祖母の形見をリフォームしました。」という美談が成り立つ。
相場が30万と言われる婚約指輪。
リフォームならそこまではかからない。
祖母のことは好きだったので、気に入ったデザインに加工して身に付けられるのなら自腹でも構わない。
そう思って、ジュエリーリフォーム専門店にメールで問い合わせをし、とりあえず鑑定と見積もりだけをお願いして予約を取った。
そして当日。
予約した時間に、予約した店舗へ行ったはずなのに、全く話が伝わっていない。
なんかモヤモヤしながらも、その場で鑑定はしてくれるとのことなので、お願いした。
曇っていた指輪を洗浄して、大きさを測って、特殊な機械を近付けたりして。
その手順を目の前で見ていたんだけど、なんかちょっと店員さんの様子がおかしい。
妙にソワソワしているというか、焦っているというか。
一通り調べた後、店員さんは私の目を一切見ずに、「ではどれにします?」と突然カタログを開き始めた。
いや今日は鑑定と見積もりだけって言ったよね?
鑑定結果には一切ノーコメントで、いきなり商品を売りつけてくるっておかしくない?
「私は今日、この指輪がどう言ったもので、他のアクセサリーに加工可能かどうかを見てもらいに来たんです。どうだったんですか?」と尋ねてみた。
すると店員さんは渋々と言った感じで、「おそらくキュービックと思います。でもまぁ、形見のお品なら加工されても良いんじゃないですか。」とこちらを見ずに早口でまくしたてた。
ちなみにリフォーム費用は8万円、出来上がりに1ヶ月かかる。
それだけの労力をかけて出来るものが、私が今つけている数千円のものとほぼ同じ。
いくら大好きだった祖母の形見とは言え、さすがにそこまでは頑張れない。
当てが外れたことも、店員さんの態度も、自分の浅はかさにもがっかりしてすごく落ち込んでしまった。
婚約記念品自体、なくても良いものだし人と比べるものでもないのかもしれない。
でもやっぱり、知人が嬉しそうに婚約指輪をしていたり、カップルが楽しそうにジュエリーショップを眺めているのを見ていると、ちょっぴり寂しいような気がしなくもない。
でも必要と思えないものは欲しくない。
そんな悶々とした気持ちを抱えた翌日、本業のセミナーへ出かけた。
常に最新の知見をアップデートするために、なんやかんやで月1くらいは休日返上で勉強会へ参加している。
普段は裸眼だが、スクリーンまでの距離が遠く、スライドの文字が見えにくいときなどは眼鏡を使用している私。
この日も小さな文字が微妙に見えづらかったので、いそいそと眼鏡を取り出した。
その瞬間。
あ、これだ。と思った。
私が今使っている眼鏡は高校生の頃からのもの。
黒柴さんは眼鏡がないと生活できないような人である。
普段自分では買わないような、ちょっと高級な眼鏡をお互いに贈り合ったら面白いんじゃないだろうか。
その日のうちに、さっそく黒柴さんに報告してみる。
女性から男性に贈る婚約記念品の王道としては時計やスーツなんだけど、時計は今のものが気に入ってるし、スーツはずっと使えるものじゃないから嫌だと言っていた黒柴さん。
眼鏡なら毎日身につけられるし、度数が変わってもレンズを変えれば良いだけだから嬉しいと喜んでいた。
どうやらお気に入りの眼鏡ブランドもあるらしい。
私の方はまだアクセサリーに対する憧れを捨て切れたわけじゃないけど、車通勤や執筆作業、勉強会のときなど、婚約記念品が日常に溶け込む生活も楽しそうだと思っている。
周りへの体裁を整えると言うより、自分達の生活に見合った、楽しい贈り物をしよう。
はじめての大ゲンカ
ことの始まりは、黒柴さんが前回の言葉を撤回したことによる。
転職して黒柴さんの職場へ近い方に引っ越すつもりだった私に対し、自分が遠距離通勤するから現職を続けて欲しいと主張した黒柴さん。
色々考えた結果、納得してその案を取り入れた私。
ところが一週間後、黒柴さんがやっぱり考え直して欲しいと言い出してきた。
育休手当という言葉で自分のエゴを押し通してしまったんじゃないか。
転職&副業でやっていくというにゃんすのチャンスを奪ってしまったんじゃないか。
にゃんすにとって、現職で働くというのは本当にベストな選択だったのだろうか。
どうやら自分の主張によって私がやりたいことを諦めたんじゃないかという不安と、そうじゃないよと否定して安心させて欲しいみたい。
だけど私は黒柴さんに対して嘘はつかないし、気休めの優しさもあげたりしない。
別に現職をどうしても続けたいわけじゃないし、何がベストな選択肢かは分からない。
ただ、育休手当以外にも色々なメリット・デメリットを考えた上で、この選択をした。
そうして決めた以上は、できるだけベストな選択肢だったと言えるよう頑張るしかない。
でも、もし今後黒柴さんに転勤の話が出たりとかした場合は辞めるから、自分にとってプラスだと思ったときには断ったりしないで欲しい、と。
私はどちらかと言うと「自分にとってベストな選択をする」というより、「とりあえず選んだ方をベストになるように尽力する、ダメならそのとき考える」タイプなんだけど、どうやら理解され難い考え方らしい。
— にゃんす (@nyansu_nyan) 2020年1月19日
だって、自分で決めて動いてみない限り何がベストだなんて分からないし。
黒柴さんはそれじゃ嫌だ、続けたいならもっと強く主張して欲しい、と言う。
そこまで愛社精神強かったらそもそも転職活動してないし、縁切神社に行く度に退職を願ったりもしないわ、と心の中で突っ込む私。
しかしなんだかんだで弊社の労働条件は悪くないし、今すぐには退職できるような状況でもないからと、仕事を言い訳にズルズルと婚期を延ばすのはもう嫌だ。
さらに黒柴さんは言う。
にゃんすのために遠距離通勤するんだから、その分のメリットが欲しい。
朝は5時に起きるつもりだから、一緒に起きてごはん作ってほしい。
お弁当も持って行きたい。
まるごと冷凍弁当はシャバシャバになりそうだから嫌だ。
この辺りでテンションガタ落ちな私。
いや自分で遠距離通勤するって決めたんやろ?
その間に読書や勉強できるから良いって内発的動機付けしとったやろ?
なんで私の料理という外発的動機付けがないとモチベーション上がりませんってなっとるん?
今まで朝も昼もあんまりこだわってなかったくせに。
というか、駅近に引っ越すなら私も通勤時間延びるし、元々私のほうが労働時間長いからな?
それでも多少は譲歩しようと思った私。
分かった、一緒に起きるし簡単なので良いなら朝と昼は私が用意する。
その代わり、夜は早く帰ってきたほうが作ろうね?
多分、定時だとほぼ同時刻か黒柴さんのほうが早いと思うけど。
それでも通勤時間が長い自分は大変なのにアピールが続くので、私の中でスイッチが切れた。
「結婚したら通勤時間が往復2時間違うんだから、ご飯くらい3食作ってよ❗️」と言われてしばらく口聞かなかった私ですが、それでは聞いてください。
— にゃんす (@nyansu_nyan) 2020年1月20日
「労働時間(定時)は私の方が2時間長い」
上手く手を抜きつつ、余力を出し合って協力して暮らせる人としか住みませんよ☺️
生活が変わることで不安なのはお互い様。
でもそれは自分の中の問題であって、婚約者であろうが他人に解決してもらうことじゃない。
「自分が苦労するんだからお前も同じくらい苦しめ」という考え方は、どんどんお互いの首を締めていくだけ。
それよりも、「じゃあどうすればお互いが楽に過ごせるのか」を考えたほうが絶対に良好な関係を続けられると思う。
頑張る理由と報酬が欲しかったんだろうけど、ずっと甘やかしてあげられる訳じゃないし、内発的動機付けでモチベーションを維持した方が楽に続くと思うよ。って優しく伝えたいだけなのに、どうしても突き放した感じになるのよね😓
— にゃんす (@nyansu_nyan) 2020年1月20日
このまま話し合いは平行線になるかと思いきや、結局私には甘い黒柴さん。
仕事は辞めたかったんだけれども
遠距離恋愛の私たち。
結婚して一緒に住むとなると、働き方も変わってくる。
それなら、私のほうが今の職場を辞めて、黒柴さんがそのまま仕事を続けたほうが良いと思っていた。
給料の天井が見え始めた私と、来年度から大幅な昇給が期待できる黒柴さん。
車必須な田舎で暮らす私と、都心の駅近で暮らす黒柴さん。
どこでも働ける国家資格持ちの私と、都会のほうが転職しやすい黒柴さん。
モノを持たず身軽に引っ越しできるミニマリストの私と、大型家具家電をびっしり揃えているマキシマリストの黒柴さん。
さらに残業当然休みも取れないブラック白猫と、定時上がり有休代休取り放題のホワイト黒柴さん。
どっちが転職したほうが良いかは明白である。
転職2年目の黒柴さんに対し、私のほうは新卒の頃からいるのでそろそろ飽きてきたというのもある。
そんな訳で後任への引継ぎ、転職先のピックアップ等はかなり前から準備していた。
万が一転職活動が難航した場合に備えて、副業もぼちぼちやっている。
貯金もそこそこあるし、投資の勉強も始めるつもり。
進歩状況は逐一黒柴さんに報告済みだ。
ところがである。
突然黒柴さんが「仕事は辞めちゃダメ!」と言い出した。
私の職場の近くに住んで、今の職場まで通うか自分のほうが転職するから、と。
片道2時間。
定期代は月数万円かかる。
なんのためにそんな無駄なことするの?
黒柴さん曰く、働き出して1年以上経たないと育休給付金が貰えないからとのこと。
私としてはそんな産まれるかも貰えるかも分からんようなものの為に貴重な通勤時間と定期代を費やすよりも、転居に伴う失業手当を確実にもらって、数ヶ月間の自由を得たほうが良いような気がするんだけど。
でもメリットは確かにある。
私は退職時期などを考えずにいつでも結婚できるし、長く勤めている分、今の職場のほうが何かと融通はききやすい。
私が住む地域の方が田舎な分、のほほんとした2人の性格には合っていて、環境的にも暮らしやすい。
私にとってはデメリットにしか思えなかった通勤時間も、黒柴さんにとっては読書や勉強時間が半強制的に増えると、むしろ喜んでる節すらある。
不思議なことに、黒柴さんが通勤に2時間かかったところで、帰宅予定時刻は2人ほぼ同じだしな!
むしろ早く帰ったんだから家事やれよみたいなことでイライラしなくて済むかもしんない。
その選択をすることで、より大変になる方がそこまで言うのなら仕方がない。
とりあえず、やるだけやってみましょう。
上手く行かなかったときはまたそのとき。
仕事も住居も、いくらでも換えは効くんだから。
換えが効かない存在のために、憧れの無職ライフを満喫するのはもう少し先のことになりそうです。
こっそり・ゼ◯シィ・はよ気付きぃ!
プロポーズされた翌日。
私は本屋で悩んでいた。
結婚すると言っても、具体的にどうすればいいのか分からぬ。
さらに困ったことに、黒柴さんが私以上に何も分かっていない。
とりあえずの知識で、両親への挨拶や顔合わせ、新居引っ越し等にまつわる手続きのあれこれの話をしたものの、「にゃんす家めんどくせぇ…」みたいな空気感。
いやいや、結納も婚約記念品も結婚式もやらないかやっても最低限みたいな時点でかなりミニマムだからね⁉︎
めんどくさいのは私じゃなくて、日本社会の婚姻制度じゃー!
というわけで、2人の知識の共有と世間一般の常識を学ぶために本屋へ。
とは言え、「結婚準備のしきたりとマナー」みたいな分厚い本をパラパラめくってみても、あんまりピンと来ないし、大体が式の準備のことばっか。
2ヶ月後に婚姻届を出そうとしている私達にはあまり必要なさそう。(そもそも2ヶ月で挨拶等と引っ越しと婚姻届提出までやろうとするのが無謀なんだけど)
どうしようかなと思っていたら、雑誌コーナーでやたらとキラキラした表紙が目についた。
結婚準備丸わかり号!
彼がやることはこれだけ!
面倒な手続きもこれで解決!
おぉ、ええやんけ。
そして値段が300円。
これは買うしかあるまい…!
しかし、あのゼクシ○である。
結婚を急かす彼女が彼氏の前に積んでプレッシャーかけるやつでしょ?
昨日の今日でもう買ってくるって、私めっちゃ浮かれた奴じゃない⁉︎
しかもこんなスッピンぼさぼさな格好でキラキラ雑誌買うの、恥ずかしい…。
うん、やっぱやめた!
今度黒柴さんが買ってくるか、2人で買いに行けばいいんや!
それよりも今夜のおでんの準備のほうが大事!
スーパー行こうっと。
そんな訳でヘタレにゃんすは本屋から逃げ出した。
そしてスーパー。
しょぼい雑誌コーナーのくせに、キラキラしたあいつがいらっしゃる…。
そして幸いにもここはセルフレジ。
こう、上手いこと隠しながらなら私でも買えるかも…!
という訳で、キラキラ表紙をがんもで隠しながら通すセルフレジ。
表紙を飾るモデルさんに心の中でごめんと謝っておく。
男の前にゼ○シィ置くような女にだけはなりたくなかったが、300円で必要な情報が得られるのなら背に腹は変えられぬ。
— にゃんす (@nyansu_nyan) 2020年1月13日
おでんの具材で隠しながらスーパーのセルフレジでこっそり購入。 pic.twitter.com/eQ7XAwrwEz
帰宅しておでんをコトコト煮込みながら、パラパラとめくってみる。
うーーん、見事に広告ばっか。
そりゃ300円だもんね。
でも、結婚までのスケジュール表とかやることリストは役に立ちそう。
彼専用のは、「男もマリッジブルーになるけど大丈夫⭐︎」みたいなのじゃなくて、「男性側が名字変更してみた体験談」「彼女と手分けして効率良く動くための手続き一覧!」とか、もっと具体的なタスクを書いて欲しい。
エヴァの婚姻届が付いてたのには笑った。
という訳で、役立ちそうな情報だけをピックアップし、ソファの端に積んでおいた。
あとは黒柴さんの帰宅を待つのみ。
ソワソワしながら待っていると、黒柴さんが帰ってきた。
さぁ、そこのキラキラ雑誌に気付くがよい!
うん、何も気にせずピザの広告を上に積んだよね。
くっ、私が今日一日どんな想いでこれを買ったと…!
でも自分からは言い出せない…!
とりあえずじっと顔を見つめてみる。
「ん?何か食べたいの?」
違うそうじゃない。
確かにプリン食べたいときとか見てるけどさ。
私は一旦諦めた。
まずはおでんを食べよう。
ゼク◯ィを買うのにご協力頂いた具材たち。
しっかりと出汁が染み込んでて美味しい。
黒柴さんも「これなら毎日食べたい!」と大満足。写真の倍量仕込んでいた分を全てペロリ。
ちょっとゆっくりした後は、お風呂にしっかり浸かって温まって。
歯も磨いたし、あとはもう寝るだけ!
ってアカンよ。
次会えるのいつだと思っとるん?
明朝は片道2時間のエクストリーム出社やで?
がんばれにゃんす!ヘタるなにゃんす!
「えぇと、実は今日、こんなものを買いまして…」
おずおずとピザの広告の下からキラキラ表紙を引っ張り出して手渡してみる。
「あぁ、買ったの?」
ほらやっぱりちょっと引いてるぅ!
いやいや、でもブライダルフェアのスケジュールとかあるよ⁉︎
無料でフルコースとか食べれたりするんだって!
食べ物をダシにしてなんとか興味を釣ろうとするにゃんす。
なんだかんだで全部に目を通してくれる黒柴さん。
いいぞ、もっと読め!
そして読了。
「名字変えるのって、結構めんどくさいんだね。女の人は大変だ。」
ようやくそこが分かったか。
昨日も言ったけど、貴方が変えてもええんやで?
さらに転居もするとなると、上手いことスケジュール組まないと二度手間になってもっとめんどくさいんだよ?と伝えると、そこはピンと来てないようす。なんでやねん。
まぁいいや。
これからめんどくさい事をたくさんこなしていく中で、少しずつ実感とか覚悟が湧いてくるのでしょう。
ほどほどの冷静と情熱の間で、お互いのペースを思いやりながら事を進めて行きたい。
よく分からんがプロポーズされた
付き合って半年過ぎたくらいから、なんとなくソワソワした感じはあったけれど。
クリスマスとお正月逃したら、1年記念である3月まではないかな〜と完全に油断しておりました。
私から言っても良かったんだけど、本人がタイミングを図っているというか決意を固めているような感じだったから、まぁもうちょい待っててもいいかーと思っていたんですよね。
昨日、動物園デートに行きまして。
ずっと前から行きたかったとこなんだけど、その日に限って雨になったりして、3度目にして念願のリベンジ。
だけど黒柴さんはローテンション。
元旦に熱出して寝込む→仕事始め→残業・休日出勤でお疲れだったようす。
動物園までは車で片道2時間以上かかるのに、お昼頃まで起きてこない。
しんどそうだし、今日の予定はキャンセルしてのんびり過ごすかな〜とダラダラしていたら、突然行くと言い出して準備を始めた。
しかし車内でもテンションは低いまま。
なんとなく話しかけづらい。
動物園では楽しそうにしていたけど、見たかったイベントは終わってたし、寒いし、閉園時間迫ってるしで私の方が気が気じゃない。
動物は可愛かったし、途中で寄ったお店の海鮮丼は美味しかったけれど、帰りの車内も微妙な空気のまま。
なのに突然イルミネーションスポットに寄りたいとか言い出す黒柴さん。
いや今から行ったら帰り遅くなるし。
明日君仕事でしょ?
今日はもう帰って早く寝ようよ。
今思えば、そもそもイルミネーション自体目が痛くなるからそんなに好きじゃないし、昔他の人と行ったことあるし、という言葉は飲み込んどいて良かった。
黒柴さんは食い下がってきたけど、私が冷静に却下し続けるから、最終的には渋々帰路に着いた。
ずっと上の空で、居眠り運転でもするんじゃないかといった感じの黒柴さんにハラハラしながら無事到着。
車から降りて、近くの居酒屋さんに寄り、今度こそ本当に帰りますかってときに、いつもとは違うルートで歩きたいと言い出す黒柴さん。
公園の横をのんびり歩きながら、そう言えば告白されたときも、全く同じ居酒屋さんで呑んで、同じ公園を歩きながら、なんだかしまらない台詞でお付き合いが始まったんだっけ、とぼんやり思っていたら。
「ねぇ、いつ結婚する?」
突然すぎる言葉にびっくりしつつ、まぁ最近結婚式の話も出たしと思って、
「うーん、いつでも良いけど、仕事とか親への挨拶とか、色々な兼ね合いがあるからねぇ。いつが良いかなぁ?」
と真面目に返答。
なのに何故かテンパる黒柴さん。
「あれ?なんか予想と違う…順番間違った?僕と結婚してください??」
うん、思いっきり順序間違えとるし、一番重要なセリフを今サラッと口走ったぞ。
とりあえず落ち着こうと、公園のベンチに腰掛けて深呼吸。
うん、月が綺麗ですね。
その後も、実は10月くらいから機会を伺っていたこと、私の職種と性格上、婚約指輪や過度な演出は好まれないと思ったこと、本当は今日イルミネーション見ながら言いたかったことなどをアタフタ話し続ける黒柴さんと、つられてアワアワし出すにゃんす。
やっぱりなんだか締まらないカップル。
お互いわぁわぁ言いながら自宅に到着し、改めて仕切り直し。
「今日僕はカピバラさんを見て、家族って良いなと思いました。だから結婚してください。」と、子年に黒柴さんからカピ婚を申し込まれるなど。
— にゃんす (@nyansu_nyan) 2020年1月12日
だがカピバラって一夫多妻制だったような🤔 pic.twitter.com/2BseCO8tdb
いやその枕詞いる⁉︎
カピバラさんのオス、縄張り意識が強く凶暴やからって隔離されとったよ⁉︎
と後でめちゃくちゃツッコミ入れたけど。
一応婚約成立っていうことになるのかな?
とりあえずお互いの親へ挨拶へ行く日をざっくり決めて、両家顔合わせや結婚指輪や婚姻届、仕事や引っ越しのことなどについてもざっくり話し合って。
あまりの急展開に頭が追いついていないんだけど、よく分からんがプロポーズされて、よく分からんままに人生が次のステージに進みそうです。
結婚式についてざっくりと話し合ってみた
昨年末頃からぼちぼちと結婚にまつわるあれこれを話すようになってきた。
こういうことについて、早めに建設的な意見交換ができるのはありがたいことである。
とりあえず、「式より旅行にリソースを割きたい」という根本的な考え方は一致。
黒柴さんは元冠婚葬祭会社、私は若い女性の多い職場で働きながら結婚式というものを見てきて、どうしても自分もやりたいとか、憧れるような気持ちには全くなれなかったのである。
それならどの程度までやるか。
黒柴さんは両家顔合わせだけで、式みたいなのは一切やらなくていいんじゃない?という考え方。
私は家族への義理と通過儀礼として最低限の人数と費用でやっといたほうが穏便に済むんじゃない?という考え方。
幸い、2人がよくお散歩に行く神社では結婚式をとり行なっているようす。
普段滅多に行かない教会とか、特に思い入れのない他人に誓う人前式とかよりは理に叶っているような気がする。
しかも前撮りで洋装も可。
後々の「やっぱドレス着たかった/見たかった!」問題も回避。
旅行とセットにしたリゾ婚も考えたけど、旅慣れしていない家族の引率なんて楽しめるどころの話じゃない。
というような事をつらつらと話してみた。
できるだけ合理的にやりたいけど、人間関係とか感情を軽視して軋轢が生じるくらいなら、多少の譲歩も必要。
結婚式のキラキラなイメージとは裏腹に、ロマンもへったくれもない超現実的な思考。
と思っていたら、黒柴さんには別の思惑があったみたいで。
「だって、俺がタキシード着たら七五三みたいじゃない!?」
そんな事ないよ、と言おうとしたけど想像したら思いっきり吹いてしまって言葉が出なかった。
いやいや。
羽織袴でも同じだと思うよ!?
これからどうなるかはまだ全然分からないけど、2人で色々と話し合って良い落とし所を見つけたいと思う。